合鍵の意味
私は今、生まれて初めて合鍵を持っています。
実家の合鍵などではなく、好きな人の家の鍵という意味での合鍵です。
それなのに、合鍵を持っているという実感がないのはなぜか。
それは、私のイメージする合鍵というのは、昔からある、形で言うと、鍵のマークによく使用されるタイプの鍵です。
それを、自分のキーケースに追加したり、キーホルダーをつけてみたり、財布のなかにいれてみたりというイメージです。
ところが私が今持っている合鍵というのは、カードタイプのものなのです。
なので、キーケースに入れるには大きすぎて入らないし、キーホルダーを付けるところもないし、財布のなかに、ほかのカードに紛れて入っているだけの、ただのカードに見えるんです。
なかなかロマンチックではありません。
ただ、それも時代の流れなのでしょう。
自分がトレンディドラマのなかで、合鍵が登場するシーンをよく見ていたのは、いまから10年以上も前のことです。
そその頃の、イメージが、大人になった今も、一番のロマンチックな印象として残っているから、イメージとのギャップになるのでしょう。
そう考えると、今の若い世代はどうなるでしょう。
きっと、今の若い世代が30代、40代になった時、マンションの鍵はキーレスが普通になっているかもしれません。
合鍵を財布に忍ばせるなどという行為は、私たちで言うところの戦前の行いであり、スマホでキーコードか何かを赤外線送信して、「はい、合鍵ね」と言って、恋人に渡されているかもしれませんね。
私たちからすれば、そんな未来のやり取りを「ロマンがない」と言って中傷するかもしれませんが、それも時代の流れなんでしょう。
大切なのは、自分が生きている時代に、その時代に流通している鍵が、私たちの思い出を作っているということであり、昔もものでも、未来の物であっても、その時代には、代用することはできないということです。
私は、今自分の財布に入っているこの合鍵が、自分が年をとった時にかけがえのない、淡い思い出となることを、今から期待をしています。